過去の苦労話|第14回:黒船VANのおさらいと、すでに見えていた“これからの地獄”
〜電子化の夢の裏で、すでに地雷は全部埋まっていた〜
第5回で書いたように、文具業界に「VAN」という黒船がやってきたとき、
私たちは本気でこう思っていました。
「これでFAX地獄から解放される!」
「商品マスタも整う!」
「注文処理がスムーズになる!」
……と。
しかし、今振り返ると、あの時点で “未来の苦労”は全部見えていた のです。
1. 商品コード統一という“絶対条件”の時点で詰んでいた
VANの大前提はこうでした。
「自社と仕入れ先で商品コードが完全一致していること」
でも現実は──
- 自社マスタはスカスカ
- 仕入先ごとに品番体系が違う
- 同じ商品でも別コード
- 価格は得意先ごとに違う
- そもそもマスタ担当がいない会社もある
この時点で、電子化の夢は半分崩れていた。
2. 仕入先が“JANで突合します”と言い出す未来が見えていた
本来は 品番=商品特定コード のはずが、
某仕入先がこう言い出す。
「JANで突合します」
いや、JANは流通経路で変わるし、
同じ商品でもJAN違うことあるし、
そもそも卸売の世界ではJANは“参考情報”でしかない。
この瞬間、私は悟りました。
「あ、これ後で絶対揉めるやつだ」
3. 直送マスタが事前に来ない問題も、すでに予兆があった
直送は本来、
- 直送先コード
- 住所
- 得意先との紐づけ
が事前に必要。
でも現場はこう。
「直送先? 当日言うからよろしく」
いや、無理。
出荷できない。
伝票も作れない。
請求もできない。
この時点で、直送地獄の未来は確定していた。
4. 注文番号が“担当CD+得意先CD”という文化の壁
当時の社内文化はこうでした。
「注文番号? 担当コードと得意先コードをくっつけたやつだよ」
ユニークじゃない。
1日に何件も注文が来るのに、番号が同じ。
入荷処理で突合できない。
ユニーク番号を導入しようとしても、
社内文化が強すぎて浸透しない。
この文化の壁が、後の“番号戦争”の火種になった。
5. VAN対応は一部だけ。残りはFAXという未来も見えていた
当時の仕入先の反応はこう。
- 大手:VAN対応
- 中堅:検討中
- 中小:FAXでいいべや
結果──
EDI+FAXのハイブリッド地獄 が確定。
6. 自動FAX導入しても、運用が追いつかない未来も見えていた
本来はシステムから自動送信するはずが、
「印刷してからFAXしたほうが安心だから」
という謎文化が発生。
そして必ず現れる“暴走担当者”。
「受注漏れ怖いから、先に仕入先へFAXしといたよ!」
結果:
- 荷物だけ届く
- 社内処理は未登録
- 入荷できない
- 返品もできない
- 現場が死ぬ
この事故、導入前から予兆があった。
7. つまり──黒船は来たけど、地獄も一緒に来ていた
第5回で描いた“電子化の夢”の裏側には、
すでに以下の地雷が全部埋まっていた。
- 商品コード不一致
- JAN突合の暴走
- 直送マスタ未整備
- 注文番号文化の壁
- FAX文化の根深さ
- 自動FAXの運用崩壊
- 人間が引き起こす事故
電子化の夢は正しかった。
でも、現場の現実はもっと強かった。

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