過去の苦労話・第15回:発注FAXを止めた日(いや、減らしただけだけど)
〜FAX文化との戦いは、電子化よりも難しかった〜
業界VANが動き始めても、すべての仕入れ先が乗ってくれるわけではなかった。
むしろ、乗ってくれたのはごく一部。
残りは──
FAX。
あの「ピーッ」の世界。
電子化の夢の裏側で、FAXはしぶとく生き残っていた。
1. 昔は全部“直送”と呼んでいた世界
当時の現場では、
仕入れ先から直接得意先へ送るのも、
仕入れ先から倉庫へ送ってから得意先へ届けるのも、
ぜんぶ“直送”と呼んでいた。
これが混乱の元だった。
- 「直送でお願い」
- 「どっちの直送?」
- 「いや、直送は直送だべ?」
- 「いやいや、倉庫通るのか通らないのかで全然違うから!」
という会話が日常茶飯事。
そこで私は、現場の混乱を整理するために、
勝手に定義を作った。
2. “直納”という概念を発明(※定義)した日
私はこう決めた。
■ 直納(ちょくのう)
仕入れ先 → 得意先へ 直接発送
→ 倉庫を通らない
→ VANに乗らない。FAX必須。
■ 直送(ちょくそう)
仕入れ先 → 自社倉庫 → 得意先へ納品
→ 倉庫が絡むので、システムで吸収できる余地あり
この“名付け”が、後の運用改善の大きな一歩になった。
名前がつくと、現場は動きやすくなる。
混乱が減る。
責任範囲が明確になる。
名付けは、現場改善の武器だ。
3. 直納はFAXの牙城だった
直納は倉庫を通らないため、
- 出荷データ
- 納品データ
- 受領データ
などの“物流の裏付け”が一切ない。
だから、VANに乗せようがない。
結果:
直納=FAX確定。
しかも、直納の仕入れ先ほどFAX文化が強い。
4. 最初は「発注書を印刷してFAX」だった地獄
直納の仕入れ先には、
毎日、発注書をプリンタで出して、
複合機に差し込んで、
「ピーッ」と送る。
これがまた大変で──
- 枚数が多い
- 紙詰まりする
- 送信エラーで戻ってくる
- 再送でまた紙が詰まる
- 送ったと思ったら送れてない
- 送れてても読めない
FAXは“電子化の敵”ではなく、
物理的な敵だった。
5. 自動FAX導入──しかし、ムダァ
自動FAXとは、
コンピュータが発注書のイメージを作り、
相手のFAX番号へ自動送信する仕組み。
理屈は完璧。
運用は地獄。
- 相手のFAXが紙切れなら永遠に送れない
- 相手のFAXが壊れてても気づけない
- 送信エラーは結局人間が見る
- 送れたかどうかの確認も人間
- そもそもFAX番号が間違ってることがある
そして極めつけはこれ。
「自動FAX? いや、紙で確認してから送ったほうが安心だから」
はい、ムダァ。
6. そして現れた“暴走担当者”
どこの会社にもいる。
「受注漏れ怖いから、先に仕入れ先へFAXしといたよ!」
いや、待て。
システム処理前に送るな。
結果──
- 仕入れ先はそのまま出荷
- 社内は未処理
- マスタ未登録
- 注文番号不一致
- 入荷処理できない
- 返品もできない
- 荷物だけ届く
- 現場が死ぬ
早くしたつもりが、地獄を早く呼び寄せただけ。
7. それでも、少しずつFAXを減らしていった
完全に止めることはできなかった。
でも、減らすことはできた。
- 直納と直送を定義して混乱を減らす
- VAN対応仕入先を増やす
- 商品マスタを整備する
- 直送先マスタを事前登録してもらう
- 注文番号をユニーク化する
- 自動FAXの成功率を上げる
- 暴走担当者を教育する(これが一番大変)
FAXはしぶとかった。
でも、少しずつ、確実に減っていった。

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