過去の苦労話 第9回:「日報なんて印刷してられるか!」と、Access君のドリルダウン革命

 

008年当時、毎朝の戦場は本社のプリンター前でした。刷り上がった分厚い日報を束ね、各営業所に向けて私自身がひたすらFAXで送りつける。 誰よりも早く出社し、静まり返ったフロアで黙々と紙を捌く日々。さらに私を追い詰めたのは、各所からの「問い合わせ」でした。
 「この数字の内訳、台帳のどこにある?」「ちょっと調べてよ」
 そのたびに私は、分厚い台帳をめくる代わりに、「Access君」を叩いてデータを検索し、答えを伝えていました。しかし、あまりの件数に私は心の中で叫びました。

「……やってらんないよね!」

親切に調べてあげるのにも限界があります。自分の作業が止まる。ならば、彼らが自分で調べられる仕組みを作るしかない。
 私は、基幹システムから「日計データ」や「売上明細」をPostgreSQLへ流し込む連携を強化し、1ヶ月1レコードの履歴管理など、複雑な商習慣に耐えうるデータベースの「背骨」を執念で作り込みました。「さあ、準備は整った。台帳も、私への問い合わせも、もういらない」私がRuby-CGIで組み上げたのは、今で言う**「ドリルダウン分析」機能でした。
 ブラウザで日報を開き、営業所の売上をクリックすれば担当者別へ。さらにクリックすれば得意先別、伝票単位、最後には伝票明細へ……。
 
 かつては重い台帳をめくるか、私に電話して聞いていた情報が、今や現場のクリック一つで向こうからやってくる。

「私を介さず、データから答えを導き出す」。この解放こそが、現場と私自身の双方に走った最大の衝撃でした。しかし、この「魔法」の裏側は泥臭いものでした。当初は毎朝、自らAccessを操作しての手動更新。やがてシステムは進化し、夜中の4時には自動更新が完了。自宅からVPN経由で日報を確認できるようになりました。
 ところが、便利になればなるほど「当たり前」の基準は上がります。万が一、夜中の更新がコケようものなら、朝、会社に着いた途端に周囲から「冷たい白い目」で見られるという……。かつては「FAXや検索をありがとう」と言われていたはずが、いつの間にか、止まることが許されない「情報のライフライン」という怪物と、24時間向き合うことになっていたのでした。

(つづく)

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